咬合(噛み合わせ)治療が難しい本当の理由

咬合(噛み合わせ)治療が難しい本当の理由(わけ)~欧米人型咬合理論と日本人型咬合理論~

減らない噛み合わせ異常の患者様

現在オーク銀座歯科クリニックには、なんらかの歯科治療を受けた後に噛み合わせ異常になってしまったと訴える患者様が日本全国から来院されています。歯科医療の各分野は目覚ましい進歩を遂げていますが、その一方で「歯科医療後に噛み合わせ異常になってしまう患者様」の数がなかなか減らないという現実があります。

以前に「噛み合わせ治療について」のページでは、歯科治療が引き起こす噛み合わせ異常について具体的に説明をいたしましたが、今回は、欧米人型咬合理論と日本人型咬合理論の違いという観点から、より根源的な問題を解き明かして行きたいと思います。

日本人と欧米人で異なる「咀嚼」の方法

歯科治療が噛み合わせ異常を引き起こしてしまう原因を探るためには、まず日本人型咬合理論と欧米人型咬合理論の違い知って頂く必要があります。ここでは、ヒトの口腔三大機能(咀嚼、発音、嚥下)の中から「咀嚼」を例に、それぞれがどのように異なるかをご説明いたします。

ソースが決め手、食べ物を噛み切るだけで味が楽しめる
欧米型食文化

ライオンの写真

欧米人がどのように食事を楽しんでいるか、それは世界三大料理の一つであるフランス料理の楽しみ方を分析すればわかります。フランス料理は、肉料理であれ魚料理であれ、はたまた野菜料理であったとしても、その味の大きな決め手となっているのは、ソースです。まだ流通機構が現代ほど発達していなかった時代に、鮮度の悪い食材しか揃わない状況でもなんとか美味しい料理をという意志のもと発展を遂げたこのソースは、フランス料理の魂と言っても過言ではありません。ですので、フランス料理を楽しむ際は、まず何よりもソースの味を十分に堪能し、その後に小臼歯と呼ばれる糸切り歯の奥にある歯の周辺で、食材を噛み切るように咀嚼し飲み込むという食べ方になります。

これは動物に例えると、ワニやライオンのような肉食獣の咀嚼方法に近いものがあります。武器でもある歯をなるべくすり減らさないよう、顎を縦方向に動かすように咀嚼する必要があるのです。学問的には、こうした咀嚼方法は「チョッパー型」と言われています。

素材の旨味を引き出す、食べ物をすり潰す日本型食文化

診療風景

一方日本の食文化はどのようなものか。これは主食であるお米の楽しみ方に見て取れます。お米は沢山噛むことによって甘みが増すと言われていますが、これは大臼歯と呼ばれる奥歯を使い、文字通り臼(うす)のようにお米をすり潰しながら食べることによって甘みを引き出しているのです。これはお米だけではなく、代表的な和食である煮物なども同様です。例えば大根の煮物。これは口の中に入れただけでは味わうことが出来ません。口の中に入れ、噛み砕き、奥歯ですり潰し、そして煮汁を溢れ出させる、そのことによって味を堪能することが出来ます。

これは動物に例えて言えば、牛や馬のような草食動物の咀嚼方法と共通するものがあります。縦方向の顎の動きだけではなく、横方向にも顎を動かし、「噛み切る」「砕く」「すり潰す」「汁を搾る」という四種類の動きを、自身の歯をすり減らしながら行っています。学問的に言えば「グラインダー型」と呼ばれる咀嚼方法です。

最後に分りやすく説明をしますと欧米人は狩猟民族でライオンやワニのように縦方向に顎を動かし肉をかみ切り奥歯(大臼歯部)をあまり使用しないで咀嚼している顎の動きをしているのです。
それに比べて日本人は農耕民族で牛や馬のように縦方向だけでなく横方向に顎を動かしお米が甘いねとか胡麻の香りを楽しむと言った咀嚼をしているのです。
また欧米型咬合理論の全てが悪いと言っている訳ではなく、日本人には日本人型咬合理論を適応した方が顎機能障害や咀嚼障害が起きにくい点を理解して頂ければ幸いです。

時代の影に隠れてしまった日本人型咬合理論

日本人の咀嚼方法と欧米人の咀嚼方法が、根本から異なるという話はご理解頂けたと思います。では治療の基礎となる学問・咬合学(噛み合わせの治療学)の分野で、日本人と欧米人で異なる咬合については、どのように扱われて来たのでしょうか。

現在発刊されている噛み合わせに関する書籍
現在発刊されている噛み合わせに関する書籍

上に挙げさせて頂いたものは現在日本で発刊されている噛み合わせに関する書籍なのですが、この中には、日本人型咬合について記述されているものはほとんどありません。ほとんどが欧米人型咬合理論についての書籍です。これが現代の日本における咬合学の現実です。

細野来馬先生書籍
細野来馬先生書籍

細野来馬先生書籍
細野来馬先生書籍

では、日本における咬合学の歴史において、日本人型の咬合について記述された書籍が全くないかというとそうではありません。細野来馬先生によって発行された『歯冠補綴学』(1938年)や『歯冠補綴及架工義歯学』(1954年)には、欧米人とは異なる日本人の咬合、咀嚼などについての記述がはっきりと見ることが出来ます。

しかし1960年代以降、そうした日本人特有の咬合理論について言及する書籍はみるみる減っていってしまいました。そして変わって出てきたのが、欧米へ留学し歯科治療を学んだ先生方が持ち帰ってきた欧米人型の咬合理論だったのです。理論として複雑でまた治療にあたっては高度な技術が必要だった日本人型の咬合理論に比べ、欧米型の咬合理論は術式も調整も簡単で、たちまち多くの歯科医師に受け入れられることとなり、結果として日本人型の咬合理論が影を潜めてしまったのです。

ここまでご説明差し上げれば、勘の鋭い方であれば、冒頭に掲げた問いの答えに気づいているかもしれません。

「歯科治療後に噛み合わせ異常になってしまう患者様は何故減らないのか?」

それは、欧米とは異なる食文化の中で育ち、咀嚼方法も噛み合わせの様式も日本人特有のものをお持ちの患者様に対して、欧米人の為に築き上げられた咬合理論でもって治療にあたってしまうことによって引き起こされているのです。

患者様の「うまく噛めない」という訴えの裏に隠されている(顎を横方向にも動かし、食べ物を潰して食べたい)という希望を読み取ることが出来ず、欧米型の咬合理論の頭でもってして治療にあたってしまっては、それこそ文字通り話が「噛み合わず」、どれだけ調整をしようとも解決に至ることは出来ません。

結果として、歯科治療後に咀嚼がうまく出来ないようになったり、縦方向の運動しか考慮されていない噛み合わせの中で、どうにかして以前のように咀嚼をしようと無理をし、顎関節だけでなく首や肩にも負担がかかり、様々な症状が出るようになってしまうのです。

私が日本人型咬合理論に出会ったきっかけ

現在発刊されている噛み合わせに関する書籍の状況から勘案して頂ければご理解できるかと思いますが、私も咬合理論を学び始めた当初は犬歯誘導と呼ばれる欧米型の咬合様式に傾倒していった流れがありました。

流れが変わったのは、1998年に日本歯科大学顎関節症センター初代センター長ならびに現在日本歯科大学名誉教授の丸茂義二先生が主催している丸茂研修会に参加してからです。

丸茂先生は、1980年から大学病院で年間1,000名にも渡る、顎関節症、噛み合わせ異常の患者様を担当する中、欧米型咬合理論では解決しない点にいち早く気づき1960年以前に常識であった日本人型咬合理論を発見し、深い学びを得て臨床で実践してきた先生です。

私は、1998年から研修会に参加しましたが、目から鱗と言いますか、今まで学んできた咬合理論は完全に覆され、咬合の旅が始まった記念すべき年になりました。

丸茂義二先生による治療をご希望の方へ

私は丸茂義二先生よりご指導頂いた『日本人型咬合理論』を活用しながら日々の臨床を行っています。『日本人型咬合理論』を適用することにより多くの患者さんから喜びの治療体験記を頂くことが出来、歯医者冥利につきる日々を送っていますが、全ての患者様を解決に導けていない現実もあります。

私が難しい症例だなと感じている患者様の一例としては、歯科治療によって全ての歯を削られてしまった「全顎補綴症例(口腔内にある歯が全て補綴されている)」が挙げられます。そうした患者様の治療は、戻すべき理想の状態=天然歯の情報が口腔内に一切存在しないため、正常な咬合を取り戻す道のりは、非常に困難なものになってしまいます。

そうした患者様も当院で解決に導けるよう、オーク銀座歯科クリニックでは、2015年4月より丸茂義二先生の治療協力を受けられるようになりました。基本的に噛み合わせ異常の患者様は私が担当させて頂きますが、私の力のみで解決に導くことが難しいと判断した患者様は、丸茂義二先生のお力をお借りして治療を進めることが出来ます。

丸茂義二先生のご協力によって、これまで以上に質の高い補綴歯科治療を患者様に提供できることを大変嬉しく思っております。どこの歯科へ行っても噛み合わせの悩みが解決しないという方は、是非一度当院へいらっしゃって下さい。

丸茂義二先生のご紹介

丸茂義二先生 日本歯科大学顎関節症センター初代センター長、日本歯科大学名誉教授

日本歯科大学顎関節症センター初代センター長
日本歯科大学名誉教授

略歴

  • 1980年  日本歯科大学卒業、日本歯科大学大学院歯学研究科補綴学専攻
  • 1984年  歯学博士取得、日本歯科大学補綴学第二講座助手
  • 1988年  日本歯科大学補綴学教室講師
  • 2001年  日本歯科大学付属病院顎関節症診療センター初代センター長
  • 2004年  日本歯科大学付属病院助教授
  • 2005年  日本歯科大学東京短期大学教授
  • 2010年  日本歯科大学名誉教授 日本補綴学会 専門医 指導医 日本顎関節学会 専門医 指導医

丸茂義二先生から患者様へのメッセージ

私は大学病院で顎関節症の治療と,不良補綴の治療を専門で30年以上の経験があります。

顎関節症はそれぞれ原因は様々で,治療方法もいろいろあります。しかし歯の治療を受けてから咀嚼の不調や身体症状の出現があって,治療した先生に不調を訴えて,何度調整しても良くならない,治らないと言われるような患者さんを拝見すると,ほぼ全ての症例が欧米型の治療を受けていることが分かります。多くの治療は,患者さんの個性を無視した画一的な歯列に,全く噛むことが出来ないようなデザインの咬合で作られていることです。顎の位置が本来の筋肉が働くことのできない無理な位置に設定されているために絶えず辛い思いをしている患者さんを沢山拝見してきました。

このような無理な治療を受けて,長年苦しんで来た患者さんの治療は一筋縄ではいきません。顎の位置が無理に決められて作られたために脊椎の彎曲や骨盤の角度などまで影響が大きく及んでいる人がいます。悪い咬合で長期間悩むほどこの影響が大きく現れ,これを正常化するためには長い時間がかかります。また欧米人型咬合を与えられ噛めなくなった患者さんは顎の関節に変形が出ている場合が多いのです。このため本来の患者さんの咬合に戻せなくなってしまっている場合もあります。 患者さんが単に噛めないと言っていても,その原因は様々で,辛い期間が長いほど影響も大きく出ています。これらの影響を冷静に分析し,可能な限り対応することが必要です。難波郁雄院長の情熱にお応えすることが出来るように協力させて戴く所存です。

丸茂義二先生より頂いた当院の推薦文

難波郁雄院長は,長年の臨床経験をもった優れた歯科医師です。彼は良い治療のために国内はもちろん海外まで勉強の足を伸ばし,一流の治療法をマスターしようとしてきました。彼の技術と知識は日本国内の補綴では日本補綴歯科学会の補綴専門医の資格を取得し,さらに研鑽を積んで学会指導医の資格を取得しました。彼の知識はその資格にも裏付けられるように,高度であり経験に満ちています。 彼の最も優れている点は,かつて海外の欧米型歯科治療を深く学び,欧米人型咬合を実践しようとし,多くの患者に受け入れられないことを実践で学び,日本人型咬合に回帰しようと舵を切ったことです。彼は時流や多勢に流れることなく,患者さんの声に耳を傾けて現在があります。彼の優しい歯科医としての人格に深く敬意を示すものです。多くの悩む患者さんに是非お勧めするものです。

歯科医師の方へ~丸茂研修会について~

丸茂義二先生は、「丸茂研修会」という学習・修練のコースを開催されています。そのコースを受講すれば「日本人型咬合」についてもみっちり学ぶことが出来ます。私(難波郁雄)も「丸茂研修会」で学習して大きな成果を上げました。

「丸茂研修会」の受講を希望される方は下記のアドレスより連絡をお取り下さい。

maruken@tokyo.nifty.jp

ご予約・ご相談

03-3535-8883

メールでのご予約

このページのトップへ